REGAL ダブルモンクストラップ
REGALのダブルモンクストラップを修理しました。
ソールの減りは無く、新品と呼んでも良い状態ではあるのですが、履いて歩いてみると靴の内部から音が鳴るようです。
原因としては
- 靴の中にあるシャンクが動いて擦れたときに音が鳴る
- ストラップ部分の革の重なりが擦れたときに音が鳴る
- ソールと中のコルクが擦れて音が鳴る
が考えられます。
一番多いのは「シャンクが動いた時」の音鳴りです。グッドイヤーウェルト製法の靴に多いのですが、沢山履いて中のコルクが痩せて(潰れて)しまうと、シャンクが動くようになり音が鳴ってしまいます(例えばALDENはコルクの上にシャンクを乗せる為、固定が外れることがあります)。
ただグッドイヤーウェルト製法に限らず、シャンクがあればどの靴も動く可能性があります。
「ストラップ部分の擦れ」も時々見かけます。ダブルモンクストラップは革の重なる面積が多いため、原因としては考えられます。ストラップ系の靴に限らず、外羽根のプレーントウでも音が鳴っている靴を見かけたことがあります。
「ソールと中のコルク」も時々ですが見かけます。クリーニングや水没した時など、ソールとの接着が緩くなってしまった場合に起こることがあります。
中底とコルクの擦れ、コルクとソールの擦れ、どちらの可能性もありますし、ミッドソールとの擦れも考えられます。
じゃあ今回の原因は?
分解をしてみると「シャンクが動く」「ソールと中のコルクの擦れ」の2つが原因のようです。
接着剤が付いている部分は、つま先と土踏まずに少ししかありません。ほぼ新品なのに鳴ってしまったのは、接着初期不良…と言ったところでしょうか。
ただ、接着剤を全体に付けないことが悪いことではなく、接着剤が無い分屈曲しやすいという利点があります。紙を3枚重ねただけの状態と、3枚接着した状態では、3枚接着した方が固く曲げにくくなります(接着剤の層が増える為)。
シャンクに関してはソールを外すと同時に落ちてしまい、固定がそもそも出来ていませんでした。
中で自由に動ける状態なら、音が鳴ってしまうのもしょうがないのでは…。
出来ることなら靴の反りに合わせたシャンクが使われるべきだと思いますが、今回のREGALの靴ではシャンクの反りの角度が違い、ピッタリくっつけることが出来ません。これだと接着が不安定になってしまいます。
シャンクは靴の反りに合ったものに交換し、コルクを全体的に接着しました。音が再び鳴らないように祈りを込めて…。
組み直し
ソール・ヒールはどこも傷んでいなかったので、再利用して組み直しました。
ただ、ソールの状態や作り方によっては再利用がどうしても出来ない場合があり、分解してみるまで分かりません…。何度か挑戦してみましたが、レザーソールは再利用がほぼ不可能です。ただ、古い英国製の靴ですと、再利用出来そうな事もありました。
今回の場合だとヒールを剥がすときに、ソールとヒールの境目の革がボロボロになってしまいましたので、そこだけは新しい物にしています。
出し縫いは専門の職人さんにお願いしました。99%同じ穴を辿って縫われています…!
前の縫い穴があるとはいえ、靴底を接着する際にどうしてもズレが出てしまいます(不思議なことに剥がすと大きくなるソールが多いのです)。
それでもピッタリ合わせてくるのは、職人技と言わざるを得ないでしょう。靴修理屋か靴マニアならニヤニヤしてしまう仕上がりです。
返送後、ご依頼者様からは「音が鳴らなくなった」とのお声を頂けました。良かったです!
状態によって様々ですので、料金が変動する場合や、組み直しが出来ないこともご了承いただければ幸いです。
コメント
いわし革店さんのところには珍妙な修理事例がたくさん舞い込んできてブログがめちゃくちゃ面白いですね…
それとも記事にされないだけで、どこの修理屋でもよくある事例なのでしょうか?
一風変わった修理やカスタムの記事、いつも楽しみです!
修理が必要になった際は是非お願いしたいと思っています。
仕事の傍ら大変だとは思いますが、記事も動画も楽しみにしております!
コメントありがとうございます!
他の修理屋さんも似たような修理はあるとは思いますが、いわし革店では変わった修理が多い方だと思います。
ブログの方も時々ですが更新しますので、またご覧いただければ嬉しいです!