秋の気配を色濃く感じられるこの頃、いかがお過ごしでしょうか。
現在ご依頼いただく品の9割は靴の修理となっておりますが、いわし革店では靴修理だけではなく、革関係のお困りごとがあれば出来る限りご対応させていただいております。
お店の名前を「いわし靴修理店」にしなかった理由もそこにありまして、革であれば色々なことがしたい!という気持ちが「いわし革店」という名前にこめられているのです。
MOMO スエード巻きハンドル
さて、今回はスーパーセブンという車の革巻きハンドルの色補修を致しました。ご依頼者様から伺った話だと、車の革巻きハンドルを綺麗にする工程について詳しく書かれているサイトが無いため、是非やり方をまとめてほしいとのことでした。ですので、今回の色補修では市販品(入手しやすい製品)のみでどのくらい綺麗になるのか、参考にしていただければ幸いです。
用意するもの
SAPHIR オムニローション:スエードの汚れを落とします。スエード用汚れ落としにはオムニローションのようなローションタイプの汚れ落とし、泡が出るタイプの汚れ落としなどがありますが、必ずスエードに使えることを確認してからご購入下さい。
SAPHIR スエードスプレー:スエードに色を乗せ、油分を補給します。スエードスプレーであれば他ブランドのものでも大丈夫です。手袋などに色移りさせたくない場合はニュートラルをお選びください。
SAPHIR 防水スプレー:色落ちを軽減させ、汚れを付きにくくします。防水スプレーであれば他ブランドのものでも大丈夫です。
汚れ落とし
手が触れるところですので、どうしても手垢や汗などが付いてしまいます。また、使用するうちに日の光、擦れ、外からの汚れ(オープンカーですので…)でスエードが退色します。この状態からスエードスプレーで色を乗せたとしても、汚れがスプレーを弾いてしまい、最大限の効果を発揮できない場合があります。そうならない為にもまずは汚れ落としから始めましょう。
オムニローションを紙コップ・お皿など、何かしらの容器に移します。瓶から直接…も出来ないことはないのですが、こぼれやすいのでお勧めは致しません。
付属のブラシにオムニローションをしっかりとしみ込ませます。
ブラシでハンドルをゴシゴシと洗います。汚れが入った泡が立ちますので、キッチンペーパーなどで泡を拭き取りつつ、全体を洗っていきます。
全体的に汚れを落とせたら、乾くまで放置します。触って水分を感じなければ大丈夫ですが、心配な方は1日程度置いておくのが良いでしょう。濡れている時は汚れが付きやすいので、綺麗なキッチンペーパーの上などに置いてください。
汚れ落としの注意点ですが、水洗いをするのはかなり危険です。水洗いはハンドルに巻かれている革の接着剤を剥がすどころか、スエード内部にあるハンドルを錆びさせる危険性があります。その為、出来る限り水を使わないローションタイプの汚れ落とし・泡タイプの汚れ落としを使う事をお勧めいたします。
色補修
スエードが乾いたら、色を乗せたくない部分にマスキングを施します。スエードスプレーは革以外にも意外と色が付いてしまうので、しっかりと保護します。
手・手袋などに色移りしても問題がない時は色付きのスエードスプレーを、色移りさせたくない場合はニュートラル(無色)のスエードスプレーを使用します。
ニュートラルの方は色付きスプレーよりも色濃くなりにくいですが、前より発色が鮮やかになることは多いです。
スエードスプレーは必ず屋外の通気性の良い場所でお使いください。
ここは必ずしも必要ではありませんが、スエードスプレーが乾いたらスエード用ブラシでブラッシングすると、スプレーで寝た毛が起き、手触りが良くなります。スエード用ブラシは1000円くらいで買えるものも多いので、ひとつ持っておくのも良いと思います。
防水・保護
最後に防水スプレーで仕上げます。防水スプレーには防水は勿論の事、色落ちしにくくなったり、汚れが付きにくくなる効果があります。
今回は手に入りやすい製品を目的としましたが、このSAPHIRというブランドには「カラーストップスプレー」という製品もありますので、そちらを使用していただく方が効果が強いかもしれません。
完成
市販品のみでもここまで綺麗にすることが出来ました。いわし革店が普段使っている業務用の色補修剤にはスエード染料や、色が鮮やかになる薬品もあったりしますが、それらが無くても個人でここまで綺麗にすることも可能です。ご参考になれば幸いです!
今回のスエード色補修は少し特殊な例でした。お任せいただく場合ハンドルの大きさにもよりますが、4000~6000円程度になりそうです。もちろんその時には業務用の薬品も使いますので、もう少し仕上がりはよくなるかな…?と思います。
ハンドルを装着した画像を頂きました。「若返りました!」とのことでした。良かったです!
今回のハンドル色補修は、双葉湊音さんという音声合成キャラクターを運営されている会社の代表の方からご依頼いただきました。いわし革店は以前より双葉湊音さんのキャラクター革グッズの製作をお手伝いしておりまして、10月22日に開催されるEach of Voiceというイベントに合わせて、今回は革キーホルダーを作らせて頂きました。
革はイタリア製のタンニン鞣しの牛革、麻糸で手縫い仕様となります。普通のキーホルダーだと面白くない…と思ったので、あまり見かけない縫い方で製作致しました。予想以上にかわいらしく仕上がり、高級感もあり、良いものになりました!是非イベントでお手に取っていただければ嬉しいです。
そうそう、双葉湊音さんは10月20日からクラウドファンディングも始まります。そちらも要チェックですね…!
こういった革製品製作依頼などを頂けるようになり、「いわし靴修理店」ではなくようやく「いわし革店」らしくなってきたのかな、と思います。
今現在、特注革製品のご依頼は受け付けておりませんが、いわし革店オリジナルの革製品は少しずつ製作を進めております。またブログなどでお披露目、販売についてお知らせ出来れば…と思っておりますので、楽しみにお待ちください!
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