ウェルトが付けられたCrockett&Jones
前々回・前回からの続きです。
踵の部分に付けるハチマキを交換します。
分解の時に取り外したハチマキは劣化で割れてしまっているのと、ウェルトとの接地面が合わないので、新しく作る必要があります。
靴作りなどの資材でハチマキも売っていることがあるのですが、大きさが微妙に合わないこともあるので、一枚の革から切り出して作っています。
ハチマキを短い釘で固定していきます。
この釘の長さが中々微妙で、長いと足に当たってしまうし、短いとソールを付ける際などにハチマキが外れてしまうことがあります。
多くの靴はステープルで簡単に付けてあることが多いので、ソールを外す際にハチマキが外れてしまうことがあるのですが、そうならないようしっかり固定します。
新しいシャンクを固定します。
ウッドシャンクは買ったままの状態で使ってしまうと中底の反りと合わないので、少し曲げてから使います。ただ質が悪い物に当たってしまうと、その時点で割れてしまうこともあります。
中底の形を取って板コルクを埋めます。
コルクには板コルクと練りコルクがあります。クロケット&ジョーンズが使っているのは練りコルクで、量産性に優れていますが沈み込みが大きいです。板コルクは沈み込みはあまりないですが、型取り・整形に手間がかかります。
このままの状態だとソールが上手く貼れないので、フィニッシャーでコルクの形を整えた後にソールを貼り付けます。
ソール交換
ソールはビブラム社のロンドラソールを使います。
ロンドラソールは耐久性・グリップ力に優れており、柔らかなゴムソールです。模様が真ん中にあるので反りが良く、少し細めなグッドイヤーウェルト製法の革靴にオススメです(ロングノーズの靴は難しいです)。
似たようなソールにリッジウェイソールがありますが、リッジウェイソールは少しポッテリした靴に似合うのと、材質が固めです。
ソールを貼り付けた後は削って調整し、出し縫いをかけます。
ゴムソールの出し縫いは専門の職人さんにお願いしています。どんな靴も丁寧に縫っていただいており、いつも大変感謝しております。
コバカッターで形を整えつつ、目付けゴテ・コバゴテなどを用いてソール前方を仕上げます。この辺りは修理屋さんで工程が大きく変わってくるかなと思うのですが、いわし革店では手作業感がありつつも、機械で仕上げたような感じになるように試行錯誤しています。
ヒールを形成していきます。
ヒール用の革を積み上げる際に一段一段積み上げる方法、ヒールだけ作ってリフトは後で付ける方法、ヒールとリフトはあらかじめ合体させて付ける方法など、様々なやり方があります。
どの方法もメリット・デメリットがありますが、今のところ画像のようにヒールを作って釘で固定した後、リフトを付ける方法が一番頑丈で良いのではないか…と思っています。ハンドメイドシューズを作る方に多いやり方です。
中敷きにロゴを入れてほしいとのことでしたので、クロケット&ジョーンズのような金箔で押しました。勝手に大手とコラボしてしまいました。
ロゴを入れるのは基本無料ですが、修理前に入れてほしいとお伝えいただいた方のみのサービスとなります。
せっかくなのでつま先を鏡面磨きをし、ボロボロだった靴紐を新しい物に交換しました。いつもは有料なのですが、記念日という事でこちらもサービスです。
修理完了(修理前・修理後比較)
靴紐を結び直し修理が完了しました。
今回の修理は靴や資材によって大きく料金が変わりますが、大体5~6万円で修理が可能です。
出産予定日は変わる事もありますので、予定を前倒しして少し早めにご返却したのですが、丁度到着した数時間後にお子様が誕生されたとご報告がありました。届いたばかりのこの靴を履いて奥様とお子様をお迎えに行かれたそうで、何とか間に合って良かった~!と思いました。
この度はお子様のご誕生おめでとうございます!そして、ご依頼ありがとうございました!
コメント