中田商店 昭五式編上靴
中田商店の昭五式編上靴を修理しました。日本軍で使われていたブーツの複製品で、当時の雰囲気を残したブーツとなっています。
サバイバルゲームの過酷な環境下で使用されているようで、至るところが傷んでおりました。
自分も日本軍などの軍ブーツを探していた時期があり、こういった靴を修理出来ることに喜びを感じます。(ebayで昔見た日本軍のブーツにはポケットがあり、そこにお守りが沢山詰め込まれていたのが衝撃的でいまだに覚えています。完全に余談です…。)
靴の構造をしていない?
構造としては2重にマッケイ縫いをかけられた革底の上に、出し縫いされたハーフレザーソールが上に乗っています。
製法的に言えばブラックラピッド製法と近いものでしょうが、中板やウェルトと呼ばれる革を挟んでいない為(この場合、マッケイ縫いされたレザーソールがウェルト代わり)、正式には違うのかもしれません。
このような作り方からか「靴の構造をしていない」と噂をされてもいるようです。ですが、例え靴の構造をしていなくても、靴の形をしていれば別の方法などで修理が可能です。
2重のマッケイ縫いをされていると一番の懸念点としては、中底のダメージ具合です。
普通の靴であればマッケイ縫いは1回ですが、この場合は2回縫ってある為、単純に考えて2倍のスピードで中底が傷みます。
中底がマッケイ縫いで傷んでしまうと、縫い目で割れてしまうことがあります。そうなってしまった場合は、縫うことが出来なくなってしまう為、中底交換が必要となります。
イタリア系の靴などは中底の革が薄く弱い物が多いので、交換することが多々あります。
このブーツの場合は、中底に厚めの丈夫な革を使われていたおかげで問題なく再利用が出来ました(縫い目の跡はボコボコで、均すのに手間がかかってしまいましたが…)。
鉄製シャンクは完璧に折れていたので交換しました。シャンクは靴の土踏まずから踵にかけて入っており、靴が変な場所で曲がらないように支えてくれています。
鉄製のシャンクは簡単に折れるものではないのですが、鉄も負けるほど過酷な使用状況だったのかもしれません。
クリーニング
靴底を外しましたのでクリーニングをしました。革を劣化させる要因の汗(尿素)を洗い流し、清潔にします。
クリーニングのタイミングは、靴底を外すような修理(ソール交換)の時が一番お勧めです。
特にグッドイヤーウェルト製法など、中にコルクやスポンジが詰まっている靴は、靴底が付いている場合、芯まで乾くのに非常に時間がかかってしまいます。
その為、接着剤が水分で劣化し、靴鳴り(音鳴り)という症状が出てしまう場合があります。
靴底を外せば完全に乾くまで1日も必要ありませんし、どこかが剥がれたとしてもすぐに対応が出来ます。
修理完了
修理完成品です。修理途中の写真を撮るのを失念しておりました…(すみません)。
新しくしたレザーソールにマッケイ縫いを2回かけ、ビブラム#705を付けた後、更に出し縫いをしました。
元々のソールは複製品でしたので革でしたが、今回の仕様は現代的(?)なゴムを使いました。
縫いは底縫い専門の方にお願いしておりますので、レザーソールを付けて送り、#705を付けてまた送る、計2回送ることになりました。
元の仕様とほぼ同じではあるのですが、今回の修理では前半分に革ウェルトをつけています。ほんの少し耐久性が上がり、見た目もカッチリして良いのではないでしょうか(ソールを削る目安にもなる為、修理がしやすいです)。
これならブラックラピッド製法と呼べるので、靴の構造をしている靴になったのではないかなと思います。
今回のソール交換の仕様で25000~30000円程度となります。
底縫いに2回送る事となりますので、タイミングにもよりますが納期は多く頂ければ幸いでございます。
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