記念日に合わせて靴修理(分解・クリーニング編)

履きこまれたCrockett&Jones

修理前

お子様の出産予定日に合わせて、靴をピカピカにしたい・悪くなってしまったところを全て修理したいとのことでご依頼を頂きました。そんな素敵な記念日にいわし革店を選んでいただいたことに嬉しく思います!

ソール
中底・ライニング

一度別の靴修理店でソールを交換されているようです。レザーソールとダイナイトヒールで、イギリスっぽさもありつつ良い仕様ですね。

ソール交換が今回で2回目(恐らくですが)ともなると、中底・ライニングも擦れが大きく、小指部分には穴が開いてしまっています。

今回の修理では
・中底交換
・ライニング補修
・ウェルト交換
・ソール交換
・クリーニング

の大修理を全3回に渡ってお送りします。

分解

ヒール
出し縫い糸を切ると剥がれます

ヒールを外し、レザーソールを縫われている糸を切ることでソールが剥がれます。
ソール交換された靴は前の修理屋さんの作業内容を見ることが出来るので、少し楽しみな作業になります。自分が修理した靴もいつしか他の人が修理することもあると思うと、手を抜くことは出来ません。

ハチマキ

ハチマキ(鉢巻き)と呼ばれる、なんと紹介したらいいか分からないパーツを外します。
これがあることで踵部分までソールをまっすぐに貼ることが出来ます。ビスポークなどのハンドメイドシューズの場合は敢えてハチマキを無くし、ソールの可塑性に任せた作り方をしたりもします。

シャンク

シャンクは靴の背骨によく例えられるパーツです。素材には木、鉄、紙、革、竹などがあります。イギリスのグッドイヤーウェルト製の革靴はウッドシャンク(ブナの木)が使われることが多いです。
画像のように折れやすい素材ではあるのですが、ロマンがあってカッコいいですよね…(見えないところですが)。お店によってはウッドシャンクを扱ってないところもありますが、いわし革店では取り扱ってます!

中底

クロケット&ジョーンズの中底は、ソール側に切れ込みを入れてあります。
これにより屈曲性の良さを得ることが出来る…筈ですが、比べたことがないので実際のところはわかりません。切れ込みの深さによっては中底が割れるので、あまりやらない方が良い仕様だと思っています。

ウェルト
すくい縫い糸

ウェルトを外し、すくい縫い糸を抜きます。
グッドイヤーウェルトの靴はチェーンステッチでウェルトが付けられている為、簡単に外すことが出来ます。糸を抜く時は「ビビビッー!」と抜け、とても気持ちがいいです。

中底を外していきます。
グッドイヤーウェルトの靴はステープルというホッチキスの芯みたいなもので中底(リブテープ)とアッパー・ライニングが固定されています。これを一つ一つニッパーで切って外します。

ライニング

ステープルを取ると中底が外せますが、理由があり踵の釘はまだ取っていない為、全部は外せません。通常の修理ではここまで外すことはほぼありません…。

クリーニング

汚れ落とし
クリーニング
普段は手が入らないところも

中底が半分外れた状態でクリーニングをしていきます。
クリーナーで汚れや靴クリームを落とすことで、クリーニングの際に水分が入りやすく、染みにもなりにくくなります。
中底を半分外しているので、普段は綺麗にしにくいところもしっかり洗えます。

クリーニング後は新聞で形を整えて乾かします。この時に重要なのが、シューツリーや木型を使って乾かさないという事です。

シューツリーは皺を伸ばすという仕事を全うするため、甲の部分が盛り上がって作られています。そんなシューツリーを入れて乾かしてしまうと、甲が以前よりも緩い靴になってしまいます。
木型も危険です。クロケット&ジョーンズ純正の木型(門外不出)であれば心配すらしませんが、別の靴の木型を入れてしまうと、横幅や土踏まずなど微妙に合ってない部分が伸びてしまう原因になります。

修理後は緩くなってしまった…と、そうはなってほしくないので、たどり着いたのが新聞紙の形を整形しての乾燥です。どの部位もテンションをかけないようにしっかりと形を整え、色移りがしないようにある程度のタイミングで外します。その際に中底が無いと形が定まらない為、あえて中底を残しています。

半乾きの状態で油分を入れることで、乾燥後もしっとりとした触感になります。ソールも無く中底のみの状態だと半日もあれば乾きます。

次回は「中底交換・リウェルト編」になります。

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